日本臨床鍼灸懇話会理事
東日本医療専門学校鍼灸スポーツ科学科 学科長
川嶋針灸整骨院院長 川嶋 和義
医療費の負担が毎年増加し、健康保険制度の破綻・崩壊が危惧されており、「いかに人を病気にさせないか」が緊急の国家的な課題になってきた。こうした状況の中、国土交通省は特定保険用食品(「トクホ」)と同様な枠組みを住宅に設けて「より健康になる家」の普及を目指し、積極的に脳を整え、心を活性化させる刺激を与える住環境を造るための「建築医学」を提唱している。建築医学が、代替医学・代替医療の一部門として成長し、まさに時代は「トクホ住宅」へと動き始めている。
では「トクホ人間」の枠組み作りは?。「動く建物」の耐震構造は、長時間にわたり常にバランスをとりながら立位が可能であり、2つの足底で支えている。足底面の身体重心の位置や、抗重力筋・下肢筋群の絶妙なバランスによって駐立姿勢の維持・補正がなされている。しかしながら日常生活における身体活動の減少や筋力の減退は、歩容の変化として現れ、「耐震構造疑惑」となる。まさに足底の重心位置の後方移動や下肢筋群の退化は、当然ながら「建て付け」が悪くなり、直立能力や歩行能力が低下する。また足部の構造的機能は軟部組織に依存しているため、脚にかかる荷重負荷は左右偏差が起きる。この左右偏差が多関節・多軸に運動連鎖し、脊柱や関連部位に影響し、歪みを波及する。柱に相当するのが上・下肢であり、屋根に相当するのが背部であり、屋根の部位に「臓腑は附く」。木下伸一氏が提唱した背候診の反応は「雨漏り」となって臓腑や経絡を侵襲し、深刻な事態を引き起こし、「雨露をしのぐ」ことも困難な状態におちいる。この動く建物のメンテナンスは、「ほぞ継ぎ」の維持・補正と、抗重力筋や下肢筋群の筋力トレーニングのサポートであり、積極的な耐震補強治療を「臓腑経絡治療」と呼称した。鍼灸治療は、「ミシュラン」の三つ星評価の格付けに値し、「トクホ人間」の枠組みとして「いかに人を病気にさせないか」の命題を託されている。
医道の日本 第772号 「新年のことば」より